バイクの駆動系について解説【No.1】〜動力伝達の基礎とクラッチの仕組みについて〜

オートバイの仕組みと整備
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 皆さんこんにちは。FLAG-UP代表の中島照文です。

 今回は駆動系と動力の伝達についてです。つまり、クラッチやミッションでどういった働きがあってタイヤを回すのか?という話しです。

 この辺りは部品点数も多く、なかなか複雑なのでなるべく分かりやすく伝わるように説明していきたいと思います。

 それではいきましょう!

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動力伝達の基礎と減速

 まず、バイクや車というのはエンジン内におけるピストンの上下運動を、クランクシャフトによって回転運動に変換することで動力を得ています。その時の動力の伝達経路はこのようになります。

クランクシャフト→クラッチ→プライマリドライブギヤ→プライマリドリブンギヤ→トランスミッション→ドライブスプロケット→チェーン→ドリブンスプロケット→後輪

 という順にエンジンの動力は伝わっていきます。

 ここで大切なのが、動力が伝わってくる過程で減速が行われ、回そうとする力(トルク)を増大させている事です。これがないと、エンジンの力だけで200〜300kgもある車体を動かす事は出来ないのです。

 減速の例として2つの歯数が違うギアがあるとします。aのギアの歯数は10T、bのギアの歯数は20Tとします。

 この時、aのギアが一回転回ると、bのギアは何回転するでしょうか?

 答えは半回転。つまり2分の1回転したわけです。この時、回転数は半分に落ちましたが、実際トルクは2倍になっています。これが減速です。

 自転車を例にすると分かりやすいですね。登り坂を登る時はギアを軽くして(低いギアにして)一生懸命登るわけですが、この時ペダルの回転数に対してスピードはあまり出ないですよね。その代わり、坂を登れるだけの強いトルクが発生しているのです。

 逆に平坦な道を走る時はギアを重くして(高いギアにして)軽快に走っていくと思いますが、その時ゆっくり漕いでもスピードって出ますよね?これは先程でいうaとbのギアが逆になったようなイメージです。つまり20丁のギヤが一回転する時に10丁のギヤは二回転するので、ゆっくりペダルを漕いでも速度は出るのです。その分トルクは減少するので坂道は厳しいですけどね。

 こういった働きがバイクや車でも行われているわけです。

オートバイの減速

 一般的にオートバイの場合は3箇所で減速が行われます。

①クランクシャフトからミッションのメインシャフトに繋がるまで(一次減速)

②ミッション内でのメインシャフトからカウンターシャフトまで(ここは変速比と言って、例えば6速まであれば6つの比があります)

③ドライブスプロケットから後輪のスプロケットまで。(二次減速)

 この3つの減速が行われる事で坂道を登ったり、高速を快適に巡航できたりするわけです。

 では、ここから伝達の順を追って一つずつ理解していきたいと思います。

クラッチの原理

 まずは、皆さん知っているであろうクラッチです。初めてミッションバイクに乗る時、ここの操作が上手く出来なくてエンストした経験もあるかと思います。

 クラッチの役割はエンジンの動力を断続する事にあります。つまり、動力をミッションに伝えたり、切ったりするわけですね。

 クラッチを説明する時によくこういった例えを使います。

 見たことある人も多いと思います。(一応、腕です笑)右腕がエンジン、左腕がミッションです。クラッチが繋がっている時は、エンジンからの回転力がそのままミッションに伝わりミッション側が回転します。

 このように手を離せばクラッチが切れている状態となりミッションに駆動力は伝わりません。

 では、半クラッチの状態とはどういう状態でしょうか?これは触れ合っているものの、がっちりと押さえつけられていない状態を言います。

 なので、エンジン側が回そうとする力はミッションに伝わりますが、100%は伝わっておらず、半分滑っているような状態をいいます。これによって発信を行う事が可能になり、微妙な車体の操作等も可能になるわけですね。

クラッチの仕組み

 では、そんなクラッチの仕組みはどうなっているのか?です。

 まず、クラッチの種類として湿式乾式があります。

 湿式はオイルによって潤滑、冷却される方式になり、乾式はオイルを用いずに走行風によって冷却するタイプになります。

 そして、多板式単板式。多板式は小さなプレートが複数枚重なり合う形で構成される方式です。単板式は一枚の大きなプレートによって構成される方式で、一部のBMWの車両や四輪車では比較的多く用いられる方式です。

 ここでは、一般的な湿式多板クラッチと乾式多板クラッチを例に紹介していきます。

湿式多板クラッチ

 バイクに最も多く採用されているタイプがこの湿式多板クラッチです。オイルに浸かっている事によって潤滑性、冷却性が高く、耐久性に優れているので多くの市販車に採用されています。又、複数のプレートを使用する事でプレートの直径を小さくして、コンパクトになるよう設計を行う事が可能です。また、オイルに浸かっているのでメカノイズの発生を抑える事も出来ます。

 構成としては、フリクションプレート、クラッチプレート、ハウジング、プッシュロッド、クラッチスプリング等になります。

 ハウジング内にフリクションプレートとクラッチプレートが複数枚、交互に組み込まれていて、フリクションプレートがエンジン側、クラッチプレートがミッション側と繋がっています。

 クラッチが繋がっている状態ではクラッチスプリングによって両方のプレートは押しつけられて繋がった状態になっていますが、クラッチレバーからの操作が入るとプッシュロッドによって、スプリングは押し込まれ縮みます。

 すると、フリクションプレート、クラッチプレート間に隙間が出来て動力の伝達が途切れる仕組みになっています。

乾式多板クラッチ

 基本的な仕組みは湿式多板と同じですが、こちらはオイルを用いずに走行風で冷却をする構造になっています。その為に外側のカバーがはずされ、クラッチが剥き出しになっている場合もあります。

 オイルによる攪拌抵抗がない為に馬力ロスが少なく済むというメリットがある為、レース車両やレプリカなどに採用されてきました。

 反面、オイルによるクッション効果が望めないので、クラッチ操作がシビアになるというデメリットも持っているのがこのタイプです。更に、メカノイズも発生するので世の流れ的にはあまりよろしくないとされています。

 しかし、個人的には大好きです。笑

 クラッチが剥き出しの為に湿式よりは定期的なメンテナンスが必要になりますが、見た目が最高にカッコいい。何か機械的に回転してるのがメカメカしくて良いですよね。

 なんて言いますか、バイクの中身が見えてるっていうんですかね。あの感じはメカ好きにはたまらないと思うんですよね。そして、ガラガラいってるあの音!良いですよね。

 全然ノイズじゃないっていう話です。信号待ちとかで後ろからあの音が聞こえて来るとテンション上がりますからね!

 はい、ごめんなさい暴走しました。笑

 この2つがオートバイで比較的メジャーなクラッチのシステムになるかと思います。本当はもっと多くの部品で構成されているのですが、わかりやすくする為に割愛しています。ただ、これでもクラッチの仕組みは、十分理解出来るかと思います。

クランクシャフトに直結しているのが、プライマリドライブギヤ。

クラッチハウジングと一体になっているのがプライマリドリブンギヤ。

その動力の断続を行なっているのがクラッチ。

そして、ここまでの減速を一次減速という。

まとめるとこんなかんじです。

 次回はミッション内での変速に続きます。

 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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