キャブレターの機能や構造について細かく解説【No.3】〜スロー系統・メイン系統の構成部品から、キャブレターの持っている機能について〜

オートバイの仕組みと整備
スポンサーリンク

 皆さんこんにちは。FLAG-UP代表の中島照文です。

 前回はフロート系統、スロー系統、メイン系統など各系統ごとの働きについて話しました。

キャブレターの機能や構造について細かく解説【No.2】〜各系統ごとの働き〜
皆さんこんにちは。FLAG-UP代表の中島照文です。  前回に引き続き、キャブレターについて解説していきます。  キャブレターはフロート系統やメイン系統など各系統毎に別々の働きをしているので、それぞれに分けて解説していきます。  系統ごとの...

 今回は、スロー系統・メイン系統の構成部品から、キャブレターの持っている機能について話して行こうかと思います。

 基本的に、キャブレターはスロットル開度に合わせた混合気を作って、燃焼室へ送る機構です。しかし働きはそれだけではなく、始動性を向上させるスターター機構や、スロットルを急に開けた際に失火を防ぐ加速ポンプなどがあります。

 それらの機能も併せて知る事で、より一層キャブレターの知識も深まるかと思います。

 それではいきましょう!

スポンサーリンク

スロー・メイン系統の構成部品

 では、各部品の役割を紹介しておきます。

メインジェット

 穴の空いたネジみたい感じですね。適正な混合比にする為に燃料の流出量を制御する役割があります。メインジェットには番号が振ってあって、番号が大きい程内径が大きい為、燃料が多く通ります。スロットル開度二分の一程度から全開時までの燃料を制御しています。

スロージェット

 アイドリングやスロットルバルブが低開度の時のガソリンの流入量を制御しています。エアブリード孔と言う小さな穴が空いていて、そこから入ってくる空気とガソリンを混ぜて混合気を作っています。

エアジェット

 メイン系統、スロー系統に送る空気量を制御しています。

ジェットニードル

 スロットルバルブの下部に組み付けられていて、ニードルジェットに差し込まれる形で収められています。その形状(テーパー)によって、スロットル開度4分の一から2分の一程度までの混合比を制御しています。

 上部には溝が掘られていてそこにクリップがつきます。このクリップの位置を調整することで混合気を調整することができます。

ニードルジェット

 ジェットニードルが収まる筒のような部品です。ニードルジェットに収まったジェットニードルがスロットルに合わせて上下する事で、メインジェットによって調整された燃料を、さらに調整する働きがあります

 又、エアジェットからの空気と吸い上げられた燃料を混合する役割もあります。

キャブレターの持っている様々な機能

 では、ここからはキャブレターの持っている機能について話していきます。全てのキャブレターが共通して持っている機能というわけではありませんので、理解しておいて下さい。

スターティングシステム

 エンジンのかけ始め、とくに冬場なんかの寒い時はエンジンってかかりにくいですよね?これはピストンやインレットバルブ、マニホールドなど各部品が冷えているので、混合気が十分に気化されない事が考えられます。なので、始動時にエンジンがかかりやすくなる為の各装置がキャブレターには備わっています。

チョークバルブ式

 キャブレターにレバーが付いていて、それを上下に動かすことでバタフライバルブを開閉する装置になります。

 始動時、エアクリーナー側に取り付けられたバタフライが強制的に閉まることで、メインボア内の負圧は高まります。それに加えて吸入空気量は減るので濃い混合気を作り出す事ができます。

 又、このタイプにリリーフ機能もあるので、負圧が高くなり過ぎると一定量バルブが開き、混合気が濃くなり過ぎるのを防いでくれます。

パイスターター方式

 キャブレターについている、スターターバルブを引くタイプのものです。

 このバルブを引くとバイスターター系統が開き、メインボアと繋がります。この状態でエンジンをかけるとバイスタータージェットから燃料が吸い上げられ、バイスターターエアジェットから入って来る空気によって、濃い混合気がメインボアへ送られる仕組みになっています。

 又、空気流入量も増加するので、アイドリング回転数も上がるようになっています。

オートバイスターター方式

 よくスクーターに採用されている方式でオートチョークとも言われ、自動で燃料を増幅する機構が組み込まれたものになります。部品構成としてはPTC(Positive Temperature Coefficient)発熱体、サーモワックスピストン、バイスターターバルブなとになります。

 作動としては、エンジンが停止してACジェネレーターか動いていない時、この燃料増幅機構は全開状態になっています。なので燃料の増幅の通り道は空いており、濃い混合気を作る事ができます。エンジン始動すると、ACジェネレーターで発電された電流がPTC発熱体に流れてきて、PTCを発熱させます。すると、その熱がサーモワックスを膨張させ各部品を伝わってスターターバルブを押し下げます。スターターバルブにはジェットニードルが繋がっているので、そのニードルが下り燃料の供給路を徐々に閉じていきます。数分後には完全に供給路が閉じてこの燃料増幅回路は全閉状態となり機能は止まります。

 これが、オートバイスターターの仕組みになります。

ファーストアイドル機構

 チョークバルブ方式のキャブレターに取り付けられた機構で、チョークレバーを動かずとファーストアイドルカムが一緒に動き、スロットルバルブをわずかに開く働きがあります。

 これにより、暖機運転の際にアイドリング回転をわずかに上げる事ができます。

加速ポンプ

 エンジンがかかった状態で、スロットルを急にガバッと開けると、ベンチュリ部分の空気の流速が急速に遅くなる事があります。すると、負圧も弱くなりガソリンを欲しい分だけ吸い上げる事が出来なくなり、一時的に混合気が薄い状態になり失火する可能性があります。

 なので、スロットルを急激に開けた際にはポンプロッドを介してダイヤフラムがポンプ室を加圧します。加圧された燃料がメインボアに送られ、混合気が薄くなるのを防ぎます。

エアカットバルブ

 エンジンを高回転で使用中に、急激にスロットルを戻しエンジンブレーキをかける事ってあると思います。

 その際、スロットルが急に閉じられたわけなので、混合気が一時的に減少して薄くなってしまいます。すると、エンジンは一時的に適正な燃焼が行われずに失火状態となります。燃えなかった未燃焼ガスはそのままエキゾーストパイプに送られ、脈動効果によって吸い込まれた外気と反応して出口付近で燃焼することがあります。これをアフターファイヤー(アフターバーン)と言います。

 これを防ぐのがエアカットバルブです。エアカットバルブはスロージェットに入るエア通路を一時的に閉じて、空気の流入量を減らします。それにより、混合気を濃くして確実に燃焼させる働きがあります。

高地での補正

 これはキャブレターの機能というよりは、セッティングということになると思います。高地では空気の密度が薄くなります。エンジンは空気とガソリンを混ぜて動かしているわけですから、空気の密度が変わってくると何かしらの設定を行わないと、本来の性能を発揮してくれません。

 なので、高地でエンジンを使用する際には各種ジェット類やスクリューを調整して、平地と変わらずに働いてくれるようなセッティングをする必要が出てきます。ちなみにここでいう高地とは標高2000メートル以上での使用をいいます。

 何度もテストを繰り返し行い、ベストなセッティングを出す必要があり、平地に戻ったら又セッティングを戻すという作業が必要になってきます。

 以上がキャブレターの持つ機能になります。

 これでキャブレターの解説を終えます。大分長くなって最後にこんな事を言うのもアレなんですが、これを読んだだけではキャブレターを理解するのは難しいです。
 何だそれって思うかもしれませんがそれだけキャブレターは奥が深く、セッティングも非常に緻密です。
 なので、実際に自らの手で触れる事で本当の意味で理解していくのだと思います。正直、やってみると面倒くさいです。(笑)
 でも、そこにはオートバイの楽しさもたくさん詰まっていると思います。興味がある方は是非、チャレンジしてみて下さい!

 ここまで読んで頂き、ありがとうございました♪

コメント

タイトルとURLをコピーしました