皆さんこんにちは。FLAG-UP代表の中島照文です。
今回はキャブレターの機能や構造について、話していこうかと思います。
最近の車両では、オートバイの高性能化や排ガス規制をクリアする為にインジェクションが殆どになりました。各種センサーから最適な燃料の噴射や点火時期を電子的に制御するFI(フューエルインジェクション)システムは非常に優れていますし、年々厳しくなっていく排ガス規制をクリアする最も最適な方法なのだと思います。
今後はキャブ車も徐々に減っていくとは思いますが、街中ではまだまだキャブレターを使用しているバイクが沢山走っています。
そして、部品を物理的に調整する事で走りが変わってくるこの機構には、バイクの楽しさがたくさん詰まった部分でもあると思います。
なので、いまいち仕組みがわからないと言う方は、これを期にキャブレターの仕組みを学んで、オートバイの楽しさに触れていってもらえたらと思います。
それではいきましょう!
混合気について
まず、キャブレターを理解する為にも混合気の簡単な説明からしていきます。
混合気とは空気とガソリンを混ぜたものです。この混合気が理想的な割合で混ざり合い霧化される事で良い燃焼を起こす事が出来ます。
一般的に空気に対してガソリンの割合が多すぎる事を『濃い』と言い、ガソリンの割合が少ない事を『薄い』と言います。混合気は濃くても薄くても完全に燃焼させる事は出来ません。この割合を混合比と言います。
3つの混合比
混合比には3つの理想的な割合があります。
①理論混合比
ガソリンを完全に燃焼させる為の、ガソリンと空気の比を言います。理論上では、ガソリン1gを完全に燃料させる為には空気15gが必要とされています。なので、理論混合比は15:1となり、体積比で言うとガソリン1に対して空気が8000必要になります。又、ガソリンは完全燃焼すると水と炭酸ガスに変わります。
②出力混合比
最も大きな出力が出せる混合比の割合を言います。最も出力が出るのは、回転数に関係なくガソリン1gに対して空気13gです。つまり出力混合比は13:1となります。
③経済混合比
一番燃料の消費が少ない混合比の割合を言います。最も燃焼消費が少ないのはガソリン1gに対して空気16gなので、経済混合比は16:1となります。
これらが、理想的な混合比になります。キャブレターにしろインジェクションにしろ、どちらもこれらの理論値に近づけるように作られています。
キャブレターの原理
では、基本的な混合比がわかったところでキャブレターの原理から説明していきたいとおもいます。
キャブレターとはエンジンに送るための混合気を作るところです。
ピストンが下降して吸入工程に入るとシリンダー内に負圧が生じます。すると、エアクリーナーから⇨キャブレター⇨シリンダーへと空気の流れが生じます。
エアクリーナーから入ってきた空気はキャブレターでガソリンと混ざり、燃焼室に送られていくのですが、ここでキャブレターを理解する為の大切なポイントとして、ベンチュリと言われる部分があります。
ベンチュリ部分とは砂時計をイメージしてみて下さい。砂時計で言う所の、くびれた細い部分を通る空気は、流速が早まるという性質があります。水道ホースの先をすぼめると、水の流れが早くなるのと同じです。
流体が速い速度で流れるとその部分の圧力が下がるという原理があるので、ベンチュリ部は圧力が下がります。
ベンチュリ部にはガソリンの吸い出し口があるので、大気圧がかかっている燃料は吸い上げられて空気と混ざり合い霧化されます。これが、キャブレターの原理となります。
ちょっと難しいですかね?
簡単にまとめると、ベンチュリと言われるくびれた部分を空気が通ると流速が早くなり圧力が下がる。すると燃料が吸い出されて空気と混ざりあう。こんな感じで理解してもらえたらOKです。
キャブレターの種類
キャブレターには種類があって主に2つに大別する事ができます。それが、CV(Constant Velocity)タイプとピストンバルブタイプです。詳しくは後述しますが、どちらのタイプもベンチュリ径が一定(固定)ではなく変化(可変)するタイプになります。ベンチュリが変化する事によって低速域での吹け上がりと高速域での出力向上を図る事ができます。
CVタイプ
CVタイプにはバタフライ式のスロットルバルブが取り付けられいて、スロットルと連動して動くことによってベンチュリ径を変化させています。
スロットルバルブは混合気が通るメインの通路(メインボア)に取り付けられていて、混合気が通過出来る道幅を変化させる事で流量を制御しています。又、CVタイプはこのスロットルバルブの動きによってバキュームピストンの動きを制御して、ガソリン量を規制しています。どういう事かをちょっと解説していきますね。
まず、エンジンが始動したアイドリング状態ではスロットルバルブは閉じています。そこからスロットルを開けていくとバルブが開きメインボア内に空気の流れが生じます。すると、バキュームピストンには穴が空いているので負圧室の空気が吸い出され負圧になります。
ダイヤフラムには大気圧が掛かっているのでバキュームピストンを押し上げる働きをします。バキュームピストンにはジェットニードルが取り付けられているので、このニードルが上下する事でガソリン量を規制しています。
スロットルバルブが閉じられメインボア内の空気の流れが止まると負圧室が大気圧に戻ります。すると、スプリングの力によっバキュームピストンは押し下げられ元の位置に戻ります。これがCVタイプのバキュームピストンの作動原理になります。
この方式のキャブレターはベンチュリ部の流速が大きく変化しないのでスロットルを急に開けてもストールしにくい特徴が有り、小型以外の多くの車種に使われているタイプになります。
ピストンバルブタイプ
CVタイプで言うところのバキュームピストンが、そのままスロットルバルブになっているので、スロットルの動きで直接ベンチュリ径を変化させています。低速域から高速域まで吸入空気量に比例してベンチュリ径が変化していくので、低速域の吹き上がりと高速域での出力向上が狙えます。主に小型車に多く使われています。
以上がキャブレターの主な種類とCVタイプの作動原理になります。
キャブレター構造
キャブレターはニードルや各種ジェット類、フロートやピストン、スプリングなど各種パーツが複雑に組み込まれており、その一つ一つが微妙な調整の上、成り立っています。なので、各系統事に分けて考えていくと理解もしやすいかと思います。
チョークバルブやバイスターターバルブなどの始動系統、燃料の各通路を制御しているフロート系統、スロー系統、メイン系統などに分けていきましょう。
燃料の通りみちを制御しているフロート、スロー、メイン系統はスロットルバルブの開度によって役割が分かれています。スロットバルブが全閉から4分の1程度の低開度では主にスロー系統が燃料を制御します。スロットルバルブ開度が8分の1から4分の3程度の中開度ではメイン系統のジェットニードルとニードルのクリップ段数で制御します。スロットルバルブ開度2分の1程度から全開の高開度ではメイン系統のメインジェットが燃料を制御します。
このように、それぞれのジェットやニードルがスロットル開度に応じた働きをしています。なので、例えば高速域での調子がイマイチとかであればメインジェットやニードル系を疑いながら点検をするといった具合になります。
次回は各種系統事の働きをそれぞれ解説していきたいと思います。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
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