皆さんこんにちは。aohitoです。
前回はブレーキフルードについて解説しました。
今回はブレーキに起きる異常現象とブレーキングのポイントです。
詳しい整備的な知識も必要ですが、こういった安全に関わる知識はもっと大切なので是非、読んでみて下さい。
それではいきましょう!
ブレーキディスクの基本とフローティングディスク
オートバイのブレーキディスクは車とちがって外側にあって常に外の環境に晒されているのでサビやすいんですよね。ただそれでもサビ対策から材質にはステンレス合金が使われています。
材質が限定されていながらも、制動力を得る為にはある程度の大きさが必要なのがブレーキディスクなのですが、バネ下荷重を小さくしたいので軽量化も必要になってきます。
しかし、軽量化の為にディスクを薄くすると、今度は熱を持った時“歪みの発生”が問題となってきます。
ディスクは温度が高くなると外側へ膨張しようとしますが、ディスクはホイールに固定されているので、そこで歪みが発生するのです。
それを防止するのが、フローティングディスクです。
ディスクとホイールとの間にアルミハウジングを介してリベットと、スプリングによってブレーキディスクを浮いた状態(フローティング)で取り付けたものを言います。なので、手で持って動かすとカタカタと動くものもあります。フローティングさせることで、歪みの発生を防ぎ、重量の軽減にも繋げているのがフローティングディスクです。
ブレーキシュー、ブレーキパッドについて
ブレーキシュー、ブレーキパッドをどちらもブレーキライニングと表現します。ブレーキライニングはブレーキの性能を左右するとても大切な部分です。200キロ300キロある物体(車体)が時速100キロ200キロで動いてるのを減速、停止させるんです。しかもそれを何回も繰り返す。改めて考えると相当にタフで厳しい条件が要求されているのがわかると思います。
主な必要条件をまとめました。
- 必要な摩擦係数をもっていること
- 水や油に侵されずに、もし侵されても復元できること
- 耐熱性が優れていること
- ブレーキを掛けた際に不快なノイズや異臭を発しないこと
- 摩耗性に優れていること
これらがあげられます。
後述しますが、ライニングは長時間高温にさらされ続けると摩擦係数が極端に小さくなり、制動力がガクッと低下します。想像しただけで怖いと思うのですがブレーキを握っても効かなくなってしまうんですよね。こういった事にならないようにパッド等のブレーキシステムは作られており、改良され続けているわけですね。
とはいえ、最終的にはオーナー様の扱い方であったりメンテナンスの有無に掛かっているわけなので、2つのブレーキの異常現象と、そうならないための対処法をあげていきます。
ブレーキの異常現象
フェード現象
ライニングがブレーキによる摩擦熱によって異常な高温になり、摩擦係数が低下してブレーキ効果が低下する事。これをフェード現象といいます。運動エネルギーを熱エネルギーに変換しきれなくなってしまった場合ですね。そうならないように気をつける事としては…
・信頼性のあるブレーキパッドを使う
当たり前かもしれませんが、ネットで何でも買える時代だからこそ大切かなと思います。やたら安いブレーキパッドもありますが、品質という面では「?」がつくと思います。
「絶対に危ない!」とは言いませんが、命を預ける大切な部分になるのでなるべく信頼性の高いものを使用した方が良いでしょう。
・長い下り坂には気をつけよう
長い下り坂が続いている際にはブレーキを長く掛け続けてしまう人もいるようです。
例えば、ツーリングで峠を登って降りる時などがあると思うのですが、そういう場合結構長く下り坂が続く場合があります。そんな時にずっとブレーキを掛けてしまったらどうなるでしょう?
前述したようにライニングが高温になってフェードが起きる確率か高くなってしまいます。なので、こういった場合にはエンジンブレーキを利用しながら下っていきましょう。
エンジンブレーキを適切に効かせていけば、極端にスピードが出ることもなく、ブレーキ操作も必要以上に行う事はないでしょう。長い下り坂では、これが安全な乗り方になると思います。
以前、友人とタンデムをしていた事があります。僕は後ろだったんですが、友人が長い下り坂でずっとブレーキを掛けながら走行していたんですよね。気になって本人に聞いた所
『なんかダメなの?』
という返事がきました。なるほど。単純に知らないのかと。これこれこうだよって説明すると本人も理解してくれたようでした。どうやら自転車感覚で乗ってしまっていたようですね。
こういったケースもあるので、ここで書かせて頂きました。知らなかった!って人もいるかもしれないので、参考にしてみてくださいね。
ベーパーロック現象
ブレーキ液が熱によって高温にると、沸騰して気化してしまいます。すると、ブレーキシステム内にエアが混入したのと同じ状態になり、ブレーキが効かなくなる現象をベーパーロック現象と言います。対処法としては…
・規格にあったブレーキ液を選択する
DOTという規格があることは説明致しました。その規格に応じたものを使う事によってベーパーロックは防げます。なので、もし自分でフルード交換をするのであれば指定のフルードを使うようにしましよう。
ちなみに、指定の規格はマスターシリンダーキャップ等に刻印されていると思うので知らない方は一度見てみるのも良いでしょう。
・ブレーキ液は定期的に交換する
ブレーキ液は吸湿性があるので、空気中の水分を吸ってしまいます。すると、沸点が下がってしまいベーパーロックを起こす確率は上がってしまいます。なので定期交換は必ず行うようにしましょう。
以上が主なブレーキの異常現象とその対処法です。知っている人には当たり前の事かもしれませんが命に関わるとても大切なブレーキのシステムなのでよく理解しておきましょう!
バイクのブレーキングについて
バイクに乗っている際、ブレーキを掛けると荷重が変化します。フロントブレーキだけ掛ければ前のめりになるように前側に荷重が移動します。逆にリアブレーキだけをかければリアサスペンションが沈み込み後ろ側に荷重が移動します。これが二輪車におけるブレーキ時の荷重の変化です。
バイクを減速させる時、ブレーキが掛かるほどフロント荷重が大きくなり、リア荷重は抜けていきます。しかし、細かく言うとブレーキ開始時においてはリア荷重の方が大きいという特徴があります。
なので、ブレーキングのコツとしては前後ブレーキをしっかり使うが、リアブレーキを若干早くかけ始めるのが理想的なブレーキとなります。
リアブレーキを早めにかけるメリットは荷重だけではなく、リアサスペンションを縮める事で車体のピッチングを抑えるというメリットもあります。
併せて、理想的なブレーキングにおける前後ブレーキの配分というモノもあります。
それによると最初は前輪の制動力の増加に伴い、後輪も同じよう制動力を増やしていく必要があります。しかし、ある一定の所からリアブレーキの制動力を減少させるような配分でブレーキングを行うのが理想的とされています。
これはフロント荷重の増加により、リア荷重が抜けてロックしやすくなる為だと思われます。なので、まとめると…
- かけ始めは車体を安定させる為にも若干早くリアブレーキをかけ始める
- 理想的な制動力を得るには、ある一定のポイントからリアブレーキを緩める
という事になります。
又、路面の具体によっては本来の制動力を得ることが出来ない事もあります。
乾燥したグリップの高い(摩擦係数の大きい)路面では高い制動力を得る事ができますが、滑りやすい路面、例えば濡れたグリップの低い(摩擦係数の小さい)路面では、本来の制動力を得る事が出来ず制動距離が伸びやすくなります。
なので、例え雨が降っていなくても路面が濡れている場合は要注意です。
ちなみに、乾いた地面でフルブレーキングを行う際にはフロント8割リア2割が理想とされていて、濡れたウェットな路面ではフロント6割リア4割と言われているのでバイクに乗ってる時は意識してみると良いでしょう!
又、ブレーキが1番効くのが、前後ブレーキがロックする寸前が1番大きい制動力を得る事が出来ます。
以上が二輪車のブレーキにおける理想的荷重の変化やブレーキの配分などになります。ただ、実際そこまで意識することは難しいし、サーキットでコンマ何秒を争うライダーでなければそこまで意識する必要もありません。難しい話ですしね。
ここで覚えておいて欲しいのは、ブレーキのかけ始めはリアブレーキから、あとは濡れた路面でのブレーキ配分さえ意識していれば全然OKです。
これらの理想的なブレーキングの値に近づく為に開発されたのがコンバインドブレーキやABSと呼ばれるものです。これらの技術の進歩によってライダーの負担をバイクが請け負ってくれる時代になりました。以前に比べABSも一般的になってきましたよね。
こういった進歩によって多くのライダーが安全に楽しく乗れるのは素晴らしい事だと思います。 今後もどういったシステムが生まれてくるのか楽しみですね!
ここまで読んで頂き、ありがとうございました♪
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